岡*****さんのレビュー
MAKOTO 完全版
偏見や先入観に基づく他人の「ありきたり」な思考を超える、人間の純粋さや善良さを一貫して描いているところ、しかもそれを、敢えて(と、個人的には思った)一話完結型の「ありきたり」な物語のなかでやってのけるところに凄みを感じる。人間を類型的にとらえず、こまやかに、かつ幅広くあらわすのが郷田マモラ作品の魅力あふれる独自性だと思う。
2021年7月11日
100
復刻版 怪談人間時計
ジャンルとしては「ホラー漫画」にあたるのだろうが、物語や画力で恐怖をあらわす正統派のホラーとはまるで異なる。寝苦しい夜に見た悪夢をそのまま一気に紙に描きつけたような不条理感とアンダーグラウンド感がたまらない。読み手のあらゆる感覚を破壊してくるような絵柄も凄まじく、狂気を帯びた何者かの襲来から必死で自分の精神を守るような思いで読んでいた。そんな漫画なのに、いちど読み始めると最後まで読み通さずにいられなくなってしまう。その強烈な引力こそが、この作家とこの作品のいちばん恐ろしいところかもしれない。
2021年7月11日
77
銀座女帝伝説 順子
とくに恋愛面のスキャンダラスな部分を強烈に、ドラマティックに描いているため「人生の真実が赤裸々に語られている」といった印象を受ける作品かもしれません。ただ、それは、実在の人々にとって決定的に不利になる話題を隠すための、ある種のテクニックなのだろうと思います。しかしそう考えながら読んでも、まだ戦後まもない時代に、女ひとりで生きるため、ネオンの世界に身を投じた女性たちに圧倒されました。主人公が勤めたクラブの先輩ホステスたちが、華やかな姿で働きながら、じつは深い事情や複雑な感情を秘めていたことがわかる場面では、自然と涙がこぼれてきたほどです。そんな女性たちが物語のなかにいるから、全体として美しすぎるにしても、素直にひとつの作品として味わいたい漫画です。
2021年7月9日
42
あいまいなかたちをした3つの小品
郷田マモラの漫画はときどき強引なところもあるんだけど、必ず心に響くものがあるし、切なくなるくらい綺麗だと思うところもある。この短編集にはそんな郷田ワールドが凝縮されてるように感じます。
2021年5月30日
4
志乃ちゃんは自分の名前が言えない【分冊版】
暴力性や攻撃性をはらんだ表現に覆われていて、読む人を選ぶ作品ではあるが、なんらかの劣等感を抱える人や抱えていた人すべてに、いちど読んでほしい。最終話のラストに、登場人物とともに読者であるこちらもまた救われた気がした。
2021年5月8日
113
伝説 トキワ荘の真実
たしかにまったくワケがわからない。「トキワ荘」関連のエピソードは、「COM」や「ガロ」からのオールド漫画ファンならすでに知っているようなことばかりだし。ただ、多くのパロディ作品を生み出してきた作者ならではの「どうしても描かずにいられなかった」という情熱と、若き日々への愛着だけは伝わってくる。
2021年4月20日
9
レビューフィルタ